Matching
マッチング事例
社内理解を深めて一体感を醸成し、地域スポーツ発展にも貢献
ひまわりネットワーク株式会社 × 陸上競技 前川斉幸 選手
ケーブルテレビ事業と、インターネットサービス等の電気通信事業を軸に展開する企業です。
同社では地域貢献の一環として2025年4月に、
陸上競技の十種競技を専門とする前川斉幸選手をアスリート社員として採用しました。
支援を行う企業と、競技と仕事を両立するアスリート社員。それぞれの思いや働き方について、
選手の支援を担当する総務・広報グループの岡部諭宜さんと前川選手にお聞きしました。
“地域に元気を届ける”ため、2名のアスリートを支援
アスリート社員の支援を始めたきっかけは?
岡部諭宜 さん
弊社では、2023年4月に水泳(競泳)の松本周也さんを初めてアスリート社員として採用しました。地元・豊田市にキャンパスがある中京大学とは以前から交流があり、たまたまのご縁で同大学に通っていた松本さんを紹介されたのがはじまりです。弊社では地域貢献のあり方を模索していたタイミングでもあり、地域で活躍する選手の支援を通じて、地域の皆様に元気を届けられたらと考えました。前川さんは弊社として2人目のアスリート社員になります。
前川選手の入社の経緯を教えてください
前川斉幸 選手
入社前は、中京大学大学院を卒業後、同大学で1年間非常勤講師をしていました。当時はスポンサー企業を募り、その広告料で競技と生活を続ける道を模索していましたが、私の取り組んでいる十種競技は知名度が低く、個人競技のため、怪我などでいつ成績が残せなくなるかも分からない。それならば、将来を見据えてしっかり働きながら競技を続けて行くことを考え、自分からアプローチしました。
岡部諭宜 さん
採用に当たって、競技成績などの条件は特に設けていません。競技を頑張っているのは当然のことですが、一時的な広告効果を狙って優秀な選手が欲しいわけではなく、「弊社の業務に関心があるか」「引退後もこの会社で働き続けたいか」を重視して選考しました。前川さんの場合も、担当役員が何度も対話を重ねた末に採用試験を受けていただき「この人ならば間違いない」と採用に至りました。
前川選手は学生時代、卒業後のキャリアをどう考えていましたか?
前川斉幸 選手
大学卒業を機に競技を辞めるつもりで、一般社員として就職活動をして内定ももらっていました。でも「やっぱり続けたい」という思いが強くなり、大学院に進学。大学院2年目で、日本選手権(日本陸上競技選手権大会)でメダルを取り、日本インカレ(日本学生対校選手権)でも優勝を果たしました。それでも、企業からスポンサー契約のオファーはなく、競技一本で生活していくことの難しさを実感しました。
契約はアスリートの意思を尊重。業務は現場に任せて交流促す
雇用形態や勤務体制について教えてください
岡部諭宜 さん
アスリート活動と弊社業務の割合をしっかりと話し合い、なるべく本人の希望に沿う条件で雇用契約を結んでいます。通常社員とは異なる勤務となることから、毎年契約更新の契約社員とはなりますが、処遇面は通常社員と同水準です。
前川斉幸 選手
陸上の練習を休みにしている月曜と金曜は、終日会社に出社。それ以外の平日は、基本的に練習時間に充てています。11月から 2月のオフシーズンには出社日を増やし、火曜日と木曜の午前中も出社しています。練習場所は中京大学で、土日に試合がある時は、前後の平日に振替休日をいただいています。
現在の仕事内容を教えてください
前川斉幸 選手
ひまわりショップの店頭で、インターネット契約などを検討・希望するお客様の対応業務がメインです。豊田市、みよし市、長久手市に計4店舗あり、シフト制で勤務しています。また、自社制作の番組にゲスト出演し、イベントの告知などをすることも。今年12月の第44回豊田マラソン大会では、レポーター兼ランナーに挑戦する予定です。
入社後に直面した課題や、改善した点はありますか?
岡部諭宜 さん
アスリート社員を採用した一年目は、業務も含めて会社側がすべて管理しようとしてしまい、一緒に働く現場の社員たちがアスリート社員をどう扱ったらいいかわからない、という状況に陥ってしまいました。その反省を踏まえて、仕事については、思い切って現場に任せることにしています。
社内の反応はいかがですか?
岡部諭宜 さん
周りの社員は「どこまで近づいていいのか」「話しかけていいのか」と、気を遣ってしまいがち。前川さんは入社当初、週4日ほど出社してくれて、周囲との距離感がグッと縮まりました。社内で応援メッセージを募ると、ファンの声も着実に増えています。
ただ、社員の中には、アスリート社員=特別扱いと感じてしまう人もいます。競技と仕事の両面から会社に貢献してくれる存在として、社内に理解してもらうこともまだまだ必要。それには競技する姿を見てもらうのが一番だと思い、大会の告知をしたり、パブリックビューイングを開催したりしています。
前川斉幸 選手
普段から、社員の皆さんといかに接点を作るかを意識しています。できる限り出社し、全員に挨拶をする。だって、人となりもわからない相手を、応援したくないですよね。その甲斐あってか、「頑張ってね」とよく声をかけてもらうことも増えましたし、試合会場に足を運んでくださる方もいらっしゃいます。
応援を通じて社内が一つに。スポーツ教室にも活躍の場!
アスリート社員を採用して/就職してよかった点は?
岡部諭宜 さん
応援を通じて思いが一つになり、会社全体に一体感が生まれます。アスリート社員の活躍は、社員のエンゲージメント向上に大きく貢献してくれるものと考えます。
前川斉幸 選手
同じアスリート社員でも、就職先によって契約条件や待遇などは様々だと思います。この会社では、競技成績に関係なく、自分という人間を評価してもらえる。「結果を出さないとこの先がない」というようなプレッシャーがないので、純粋に競技に集中でき、また業務にも励むことができています。
働く上で、競技経験が生きた場面はありますか?
前川斉幸 選手
店舗でイベントを開催した際、アスリート社員として「走り方教室」を担当し、陸上経験の価値を感じることができました。あとは、長年競技を続けてきて、メンタルは鍛えられているので、働いていて精神面でキツイと感じることはまずないですね。
岡部諭宜 さん
走り方教室に参加してくれたお子さんや親御さんを見て、大きな手ごたえを得られました。競技で結果を出すだけでなく、スキルを生かして、地域スポーツの発展に寄与することも、社会に求められている地域貢献の形ではないでしょうか。
地域に愛され、応援してもらえるアスリート社員に
今後の目標や展望を教えてください
岡部諭宜 さん
私たちがやるべきは、地域の皆さまに、地元の選手と感じてもらえるよう、彼らの露出を増やし、もっともっとPRすること。地域の皆さまから愛され、応援してもらえるアスリート社員になれるよう、選手と一緒に取り組んでいきます。
前川斉幸 選手
当面の競技目標としては、2026年に愛知県で開催されるアジア競技大会の日本代表になること。また、社会人としては、店舗業務を1人でこなせるようになるのが目標です。引退した後も、アスリート出身として、仕事の中で自分の強みを生かしていきたいと考えています。
採用を検討する企業/就職を希望するアスリートへ、メッセージをお願いします
岡部諭宜 さん
まずはお一人採用してみてください。アスリートの支援は、やりがいも大きい。競技結果に関わらず、会社全体で思いを一つにすることができるのであれば、それは大きな収穫なのではないでしょうか。ただし、「期待したのに応えてもらえなかった」とならないよう、互いが求めるものを事前にしっかり話し合っておくことは必要です。
前川斉幸 選手
アスリート社員として雇ってもらうのであれば、「その会社の看板を背負う」くらいの覚悟と、たとえフルタイムで働きながらであったとしても、その競技で上を目指していく気持ちも必要だと思います。
前川選手の一日のタイムスケジュール(午前中勤務の一例)
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9:00
- 始業、店頭接客業務、番組出演等
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12:00
- 終業
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午後
- 中京大学にてトレーニング、ジム等
PROFILE
前川 斉幸 選手
(まえがわ まさゆき)1999年8月生まれ。三重県出身。中京大学大学院卒。
100m走、走幅跳など10種目の合計得点を競う十種競技を専門とする。
2023年の大学院在籍時に第107回日本陸上競技選手権大会3位、第92回日本学生陸上競技対校選手権大会1位。
現在は、ひまわりネットワーク株式会社で店舗業務に従事しながら、競技活動を続ける。